2011年6月28日火曜日

空車

空車の車はソライロだった。
車に乗り込むとさわやかな風が吹いた。
「どこにいきますか?」
空模様のシャツを着た運転者さんが聞いた。
「どこへいけるのですか?」
逆に私は聞いてみた。
「夜空のむこう、雨上がりの夜空、空と君のあいだ。
それから、うわの空と怪物君の空にも行けますが、
どちらも少々危険です。うわの空はそのときによって
どこに行くのかわかりませんし、うわの空だけに
帰って来れるかどうかわからないのです。怪物君の
空は、かなり荒れるという噂を聞きます。私はこの
ふたつは、未だ行ったことがないのです。」
「おすすめはどこですか?」
「雨上がりの夜空あたりでしょうか。今ならジン
ライムのようなお月様が見られるはずです。」
私を乗せた車は、雨あがりの夜空に向かって走り出した。
さきほどまで、ぬけるような青空は、次第に暗くなり、
あっという間に真っ暗になった。
そして、その真っ暗な空にジンライムのような月が
ぽっかり浮かんでいた。
ふと気付くと、私の乗っている車はいつの間にか
ソライロではなくなっていた。

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